はじめに

カルロス・カスタネダは、60年代ののカウンターカルチャーに大きな影響を及ぼしたドキュメンタリー(またはフィクション)作家、のちにカルト集団の教祖となった人物です。

カルロス・カスタネダ

このサイトは、カスタネダについて2016年頃から書き溜めてきた大量の駄文を再編して友人向けに残すことにしたものです。

概要・レファレンスのパートは、ブログやコラムを読むにあたって必要となる基礎情報を紹介しています。

ブログのパートでは、カスタネダが残した12冊の著書と彼の関係者や研究者による文献を紹介、私なりの考察を記しています。
コラムには、本編とは異なった視点からの読み物や重要な考察も載せています。

なお、文中、原文の雰囲気を残すためネイティブ・アメリカンをインディアンと表記している場合があります。


カスタネダはUCLAの学生時代、ネイティブ・アメリカン(インディアン)の文化研究のため知り合ったドン・ファン・マトゥスというシャーマンとのインタビューを記録した論文が書籍として出版されベストセラーとなります。

内容は、カルロスがドン・ファンとの対話を重ねる内に、ネイティブ・アメリカン文化の魅力に取り憑かれ呪術師の弟子になって成長する過程の記録(創作)を記したもので、続刊も含めヒッピーに代表される当時の若い世代を魅了しました。

ボブ・ディランが自伝でもカスタネダについて語っていますので当時の文化人の間でもてはやされていたことがわかります。

カウンターカルチャーについては語りつくされていますが、当時のUSの若い世代は、ベトナム戦争を背景に金と欲に満ちた物質文化に対する不安や反動として自然や伝統と馴染んで生きる文化に対するあこがれを抱いていました。

ビートルズ、スティーブ・ジョブズらのインド、ジョン・ケイジら文化人たちの禅はじめ東洋哲学への傾倒。ハインライン『異星の客』、ハーバート『砂の惑星』に代表される異文化、少数民族文化に対する憧憬は、マリファナやLSDなどの幻覚性物質と結びついて神秘主義、オカルト文化、果ては陰謀論へとつながる系譜の一つとなっています。

こうした系譜は、当初、「精神世界」や「ニューエイジ」という名称でくくられ、21世紀初頭からは、「スピリチュアル」と名前を変え、60年代同様、先の見えない世の中に対する不安を背景に動画配信サイトなどで新たなファン層を獲得しています。

カスタネダの本は、今でも書店の「精神世界・宗教」などのジャンルに分類されています。

インターネットでカルロス・カスタネダを検索すると、日本でも松岡正剛、中沢新一、細野晴臣、よしもとばなな、北山耕平、島田裕巳など数々の文化人たちがカスタネダに影響を受けていたことがわかりますが、現在(2023年)一般の方々でカスタネダを知っている日本人はわずかだと思います。

私のカスタネダ研究(?)は、2016年頃から書き溜めてきた大量の駄文ですが、再読してみるとカスタネダについて基礎知識がある人向けの内輪ネタになっていました。
最近、これらをごく限られた友人に向けて残そうと思い立ち、改編・追記したものが今回紹介する一連の内容です。

参考文献の中には、エイミー・ウォレス著「呪術師の弟子」はじめいくつかの書籍は本邦初公開の文献ですので楽しんでいただけると思います。

(初出:2023/5/23、旧タイトル「はじめに」を改訂)

>旅支度