分離3「見ること」への準備(2/2)

~ドン・ファンとの再会、オアハカにて(たぶん)~

さて、カルロスは、そのオアハカの公園のベンチで旅の途中、車がエンコして滞在したホテルでのできごとを話します。

食べ残しに群がる少年たちの貧困生活を見て気の毒に感じた。
ロサンゼルス(の豊かな)生活との対比に衝撃を受けた(P30)というエピソードを聞かせたところ、ドン・ファンに幸せの尺度について嗜(たしな)められます。

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「たしか以前お前はわしに、人間の最も偉大なことは知者になることだと言わなかったか」
「お前のその豊かな世界が、知者になるのを一度でも助けてくれたことがあると思うか」
(分離31)
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ドン・ファンは気が利いたことをポンポン言いますね。

呪術(あるいは知?)で人々を「変える」ことで貧しい人たち助けられるのではないか?その一環としてカルロスを変えようとしているのでは?と問いかけるカルロスにドン・ファンが答えます。

お前を変えようなどとは思っていない。いつか人間を別の仕方で見られるようになるだろうが、そうすれば人間を変える方法なぞないことがわかるだろうよ

真理ですね。変われるものならとうに変わってますとも、と一瞬そう思いましたが、ドン・ファンの言いたいのはそうではなくて・・・、

小さな煙を使うと人間を光の繊維として見るのを手伝ってくれるそうです。(P32~P33)
呪術を修行して「見る」ことができるようになると、人間が輝くタマゴに見えるようになるともいいます。(P33)
ドン・ファンは、この後も光の繊維といったりタマゴといったりしますが、いずれにせよ、私たちは何がしか光っている存在なのだそうです。

ま、全員タマゴなんだから、変わりようがないというのがドン・ファンの話でして、高度なカウンセリングとはまったく無関係です。

ドン・ファンは不可知なものに関してはきっぱりとわからない、っていうので潔いですし、それがまた彼の魅力かと思います。

以前、カルロスが天国について聞いたときもこんな感じでした。

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カルロスが「え?そこは神のいる天国かい?」と尋ねるとドンファンは、
お前頭おかしいんじゃないか?わしは神のいる所なぞ知らんぞ」と馬鹿にされます。
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タマゴというと私に「カルロス・カスタネダ」の本を進めてくれたT.S.が同時期にくれた本を思い出します。
”The Crack in the Cosmic Egg”というタイトルの本です。

これもニューエイジ系の本では人気があったそうですが、実は私、こちらは当時(もちろん今も・・・)、英語が難しくて読んでいません。時間ができたら再挑戦してみようと思っています。

(初出:2016年7月29日「オアハカ(たぶん)にて(2)  (分離 第一部「見ること」への準備 1ドン・ファンとの再会(2) )」)