以前、書いた「孤独」に関する雑文の一部がカスタネダに関係する内容でしたのでここに採録します。
孤独と言えば、思い出すのがカスタネダの『力の話』で引用されている『孤独な鳥の条件』という詩です。
私の手元には、日本語では『力の話』の初期の出版である『未知の次元』に掲載された名谷一郎氏の訳とカスタネダ本の本家?、太田出版による『力の話』真崎義博氏による翻訳、そして上記、二冊の原作、『Tales of Power』に掲載されている英語版があります。
この詩のオリジナルはスペイン語ですので『Tales of Power』に掲載された英語翻訳はカスタネダ本人の手になるものと思われます。
カスタネダは、LACC(Los Angeles Community College)時代、教師に詩の才能を認められていたといいますから詩については造詣が深かったのでしょう。
私の邪推では『力の話』から以降は情報提供者(=ドン・ファンたち)不在の完全なフィクションですから文中でカルロスに詩の朗読を頼むドン・ファンは、まさにカルロス本人なのだと思っています。
スペイン語の原詩もついでに掲載しようと検索したところ日本語のブログでとても良い記事を拝見しましたので参考にさせていただきました。この場を借りて御礼申し上げます。
孤独な鳥の条件
孤独な鳥の条件は五つ。
一、孤独な鳥は至高へと飛ぶ
二、孤独な鳥は連れに煩わされることがない
たとえそれが同類でも
三、孤独な鳥は嘴を天空へ向ける
四、孤独な鳥は決まった色をもたない
五、孤独な鳥はとても静かにうたう
サン・ファン・デ・ラ・クルス
(光と愛の金言集)
※『力の話』(新装版)太田出版2014年4月8日第1版第1刷
真崎義博訳
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孤独な鳥の条件は五つある
第一に孤独な鳥は最も高いところを飛ぶ
第二に孤独な鳥は同伴者にわずらわされず
どの同類にさえもわずらわされない
第三に孤独な鳥は嘴を空に向ける
第四に孤独な鳥ははっきりした色をもたない
第五に孤独な鳥は非常にやさしく歌う
サン・ファン・デ・ラ・クルス
<光と愛のことば>
※『未知の次元』講談社学術文庫1993年6月10日第1刷
名谷一郎訳
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The conditions of a solitary bird are five:
The first, that it flies to the highest point;
the second, that it does not suffer for company,
not even of its own kind;
the third, that it aims its beak to the skies;
the fourth, that it does not have a definite color;
the fifth, that it sings very softly.
– San Juan de la Cruz, Dichos de Luz y Amor
( Carlos Castaneda “Tales of power” )
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LAS CONDICIONES DEL PAJARO SOLITARIO
Son cinco:
La primera, que se va lo mas alto;
la segunda, que no sufre compania, aunque sea de su naturaleza;
la tercera, que pone el pico al aire;
la cuarta, que no tiene determinado color;
la quinta, que canta suavemente.
(初出:2018年7月2日)