※以降も、ジェナロとヘナロ、読み方混在で記事を書いています。
さて、いよいよ『分離されたリアリティ 第一部』のメインイベント”滝渡り”です。

大瀧詠一先生は、滝渡りしてドボンと落ちますが、ドン・ヘナロは大丈夫です。
1968年10月5日ふたたびドン・ファンはカルロスを伴って中央メキシコへの旅に出ます。(分離118)
カルロスを友人のドン・ジェナロに紹介するためです。
その際、ドン・ファンは、呪術師の名前や居場所を人に明かしてはいけない。
友達の名前はジェナロと呼ぶようにと言われます。
ということでドン・ジェナロはあくまでも仮名で、ドン・ファンも私たちはすっかり呼び慣れてますが実は仮名ということになります。
私の推測では、ドン・ジェナロはオアハカに住んでいますから二人はソノラからオアハカに向かうのだと思います。
更に、ディテールまで推理を巡らせますと、ドン・ファンの本当の住まいはルシオたち家族が暮らす「トリム」(ソノラ州南部)にほど近い街でそこからオアハカに居るドン・ジェナロに会いに行く。こんな感じだと思います。
オアハカは山岳都市ですから、本章で繰り広げられる「滝行」にでかけるにはうってつけの土地柄であります。
ジェナロに会う時は、心に疑いをもってはいかんと言われ不安になるカルロス。
「お前はもうヴィサンテという呪術師に会って殺されそうになったじゃないか」(分離119)
既報の通り、ヴィサンテは、ドゥランゴに住んでいる呪術師で以前、アポなしで訪れた時お土産に「魔法の草」をもらった相手ですが、「殺されそうになった」っておだやかじゃないですよね。
サラっと読む限り、ヴィサンテがカルロスを殺す動機や意志を持っていたとは到底思えない出来事です。
ヴィサンテの草の精たちはカルロスを殺すところだったのでしょうか?
手順を間違えるとダツラやメスカリトが命を奪うといった説明がこれまでも本文に出てきていますが、これによくにた感じでシリーズ後半になるとカルロスたち呪術師が割と頻繁に命を奪い合いそうになる場面が頻発します。
その割に、当事者たちが割と呑気で、そのギャップによる気味の悪さがいい味を出しています。
車を(おそらく麓に)とめてドン・ヘナロの住んでいる山の斜面にある小屋まで二日かけて歩きます。
カルロスは、ドン・ファンに本をもって行ったときに、ほんの少しだったが会ったことがあったとあります。本(『ドン・ファンの教え』)を持って行ったのはこの年(1968年)の4月です。
ドン・ヘナロは、ドン・ファンよりも若く、おそらく60になったばかり、とカルロスは見立てます。
(初出:2016年8月14日「分離6 ジェナロの滝渡り(1)」)