~ラ・カタリーナ~
カルロスは、やはり盟友にポケモンのような力を期待してのことでしょうか、ドン・ファンに盟友が私たちに何をしてくれるのか?と頻繁に尋ねます。
ドンファンは、盟友から得た力を使ったときの自分の経験を語ります。
「一度ものすごく高く飛び上がって一番高い木のてっぺんの枝をたたき切ったことがあった。だがそれはただそれだけのことにすぎなかった。
「何のために使う?インディアンを驚かすためにか?」
そんな力は虚しいだろう?ということでしょう。
1961年11月23日の記録では、ドン・ファンの義理の娘が登場します。
このあたりの平凡な家庭生活のある日常との接点が絶妙です。
ドン・ファンは、仙人ではないのです。
義理の娘に付き添われてあらわれたドンファンは何週間か前に足首を脱臼したそうでギブスをしています。
ケガをした義理の父親の世話を嫁がしている呪術師のカジュアルな姿が妙にリアルです。
強力な魔術師がこれまた月並みなケガをしているのを不審に思ったカルロスにドン・ファンが告げます。
原因は、ドン・ファンに敵対?する魔女ラ・カタリーナの仕業だ、と。
カタリーナは、クロウタドリに化けて飛んできてふいをつき転ばされたのだそうです。

「カタリーナ」は、この後もたびたび登場するレギュラーキャラクターです。
ドン・ファン一派とは、遠い親戚のような付き合いのようです。
ところが先に読み進んでみても登場はしても一度もカタリーナと対峙する場面がなくとことん謎めいた存在です。
実話であったらいいなという想定ですと、ドン・ファンのこのケガは、本当はただの不注意によるもので、この機会を利用し教育の一環としてカルロスにカタリーナに対する不気味な印象を植え付けるつもりでウソをついたのかもしれません。
さらにこの脱臼自体も芝居だったのでしょう。その後、たったの10日で完治していることにカルロス自身が驚いています。
ドン・ファンは後に、カタリーナを介した恐ろしい「中間試験」をカルロスに受けさせます。
これも本当は、ドン・ファンがカタリーナに「一芝居」うってもらったのではないか?と私は邪推していますが、『分離したリアリティ』では、カタリーナ自身は試験についてはまったく知らないしドン・ファンがもともと狙われていたのも本当だとドン・ファンが念をおしています。
(初出:2016年7月9日「ラ・カタリーナ登場 (教え 3 ダツラの体験と煙の準備(2/5))」)