教え12 メスカリトとの再会(2/4)

~トライブについて~

1962年7月6日の日記は、とても重要です。

ここで書かれているのは少し前の6月23日のできごとで、その日の午後おそくに「チワワ(州)へキノコを探しに行く」旅に出た、とあります。

英語版の原本を確認すると、確かに「キノコ(honguitos/mushroomsを探しにいく」と書いてあります。キノコです。

チワワ州は、ドン・ファンたちの本拠地、ソノラの隣の県です。

世に出回っているカスタネダ批判のひとつに、キノコの産地の話があります。

カスタネダが一巻目の序文で「シロシベ・メキシカーナ」だろうと書いてあるキノコが、ソノラ砂漠には生えていないのだそうです。

しかし、ここで二人は、チワワに採取に出かけているのです。
どうなんでしょうか?チワワには生えているのでしょうか?

調べてみたのですがわかりませんでした。

27日の午前10時に、チワワ北部の小さな炭坑町について彼の友人の「タラウマラ(Tarahumara)・インディアン」の夫婦に世話になったそうです。

By Carl S. Lumholtz –
Arqueología Mexicana. No. 51. 2001.,
Public Domain

この夫婦も呪術師仲間なのかもしれませんが記載はありません。
ちなみに、タラウマラ族は、ペヨーテを扱うそうです(虚実p182)

ドン・ファン創作説でひきあいに出されるのが、ヤキ・インディアンはドン・ファンが行う呪術やドラッグを使わないという話があります。

たしかにドン・ファンはヤキ部族出身なのかもしれませんが、ここでは別の部族であるタラウマラ部族との交流が描かれています。

シリーズを読み進めると、ドン・ファンの教えがまったく「部族」と関係がないということもわかってきます。

彼が実践しているのは、中央メキシコに太古(トルテック)から伝わる知識やノウハウということで、ドン・ファンの先生や、そのまた先生も出自や人種はまったく不明ですし、ドン・ファンと彼の師匠との出会いもまったくの偶然(通りすがり)です。

ですのでドン・ファンはヤキ族の先輩から部族の伝統としてこれらを教わったわけではないことがわかります。
また大師匠たち先達の弟子、孫弟子たちも様々な出身のようです。

うがった見方をすると、カスタネダは、初期の出版で部族ネタをつっこまれたので上記のような後半の展開を執筆したのかもしれません。

(初出:2016年7月14日「トライブ(部族)論争 (教え 4.メスカリトとの再会(2/4))」)