旅16 戦士の気持(2/2)

続く、1961年9月3日の日誌です。

山でアメリカライオン(ピューマ(クーガ))で恐怖の体験をしたカルロスは猛獣との遭遇について反芻をしています。

Panthera atrox.jpg

そういえば、アメリカライオンと単純に検索すると何十万年も昔に生息していた古代のライオンが引っかかってきました。

やはり日本語版の翻訳としては、ピューマにしておけばよかったのかなと思います。

カルロスは、もしかしてドン・ファンに一杯くわされたのではないかと疑っています。

あれは本当は、クーガじゃなくてドン・ファンが動物のフリをしてたのでは?とか。はたまたもっと小型の生き物におびえただけだったのでは?とか。

実際にドン・ファンがカルロスをだました強烈な「ワナ」だった「ラ・カタリーナ事件」が起きるのは1962年のことですから、この時点でのカルロスの疑念は前にもやられたからなではなく自然な発露によるものです。

カルロスの疑いを聞き、ドン・ファンはアメリカライオンの実在性にこだわる必要はなく、その時、自分を捨ててコントロールし恐ろしさが自分を戦士の気持ちにしたということが重要だと言います。
(じゃ、やっぱり脅かされただけかも)

「戦士は、傷つけられることはあっても、感情を害されることはない」とドン・ファンが言います。
「戦士は、ちゃんとした気持ちで行動しているかぎり、まわりの人間のすることに侮辱的なことなどなにもありはせん」

たとえ騙されていてもドン・ファンは深いです。

ところで、この日、カルロスがドン・ファンの家で起きるとドン・ファンは家にいませんでした。戻ってきたドン・ファンと一緒にお昼を食べます。

実は、『教え』ではこの同日の午後、ドン・ファンは午後、カルロスを伴ってダツラの採集にでかけます。(教え66)
上記の会話はお昼時ですから、その後、でかけたのですね。見事な整合性です。

余談ですが、若い男をつぎつぎと餌食にする中年女性のことを英語でクーガといいます。「アメリカライオン」っていうより雰囲気が伝わりますね。

英語の俗語辞典のUrban Dictionaryにリンクを張っておきます。

(初出:2016年9月19日)