自分は幻の洞穴にいたのだろうかとすっかり動転しているカルロスを落ち着けるためにドン・ファンは彼を山の頂上付近にある力のある石に座らせました。
カルロスが不機嫌そうにぞんざいに座ったのでドン・ファンが注意をします。
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わたしが不機嫌に行動して力に対して不注意であり、それをやめないと、力がわたしたち二人に襲いかかってきて、生きてその丘を離れることはできなくなる、と言った。
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また、なにかというと命があぶなくなります。その通りだとすると本当に世界は恐ろしいところです。
ここでもまた夢見の進み具合について尋ねられます。
手を見ることがなかなか進みが悪いのでドン・ファンは、効果があるので特別なヘッドバンドをつけることを勧めます。それは自分で作らなくてはならなく作り方を習いますが私たち読者には明かされていません。
力の肉を食べて元気を出すように言われたカルロスは、もしかするとこの肉に幻覚剤がしみこませてあったので幻覚を見たのではと疑います。
カルロスがそのことを告げるとドン・ファンはあきれます。
「まったくだめになっちまったな」
「肉のなかには、力以外なにもありはせん」
「夕べおまえに起こったことは冗談でも悪ふざけでもない。力と出会ったのさ。霧も、闇も、稲妻も、雷鳴も、雨も、ぜんぶ偉大な力の戦いの一部なんだ。ものすごい幸運をつかんだんだぞ」
昨晩の嵐が、本章のタイトルでもある「力の戦い」なのだそうです。
昨日、カルロスがみた橋もリアルで、もしドン・ファンがとめなければカルロスはそのまま渡っていただろうといいます。そして力がまだ十分にないカルロスは(こちらの現実の)峡谷に落ちていただろう、と言います。
ドン・ファン自身はカルロスが見た橋は見てなくて”力”を見ただけだといいます。カルロスとドン・ファンの知覚は似てないからだそうです。
ドン・ファンが最初の「力の戦い」のときは、当時、憎しみに満ちていたので自分の敵をみたのだそうです。(そんなに何回も「力の戦い」を体験するのでしょうか?)
カルロスの本当の戦いは、「おまえがあの橋を渡ったときに起こるだろう。橋の向こう側になにがあるかって?そいつがわかるのもおまえだけだ」
力と世界を止めることについての談義は続きます。
「橋」のイメージはシリーズ後半でも登場しますのでここに記しておきます。(pending)
霧に囲まれるのを待って、二人は逃げるように山を下ります。
(初出:2016年9月21日)