日本語版の系譜

12冊の著作の内、私が1979年頃に原著で読んだのはペーパーバックで販売されていた第4巻『力の話』までです。

5の『力の第二の環』は、滞米中にハードカバーで発売(1977年)されていたので買ってはあったものの結局、読まずじまいで2015年に「自炊」してしまいました。

当時、和訳は4巻目以外すべて「二見書房」という精神世界やオカルト系の本が得意な出版社から出ていましたが、コストの点もあり20年近く和訳本を買うふんぎりがつきませんでした。

やがて日本にアマゾンが進出したのを機に2000年に『沈黙の力』と『無限の本質』を除く日本語版を大人買いしました。(後に判明したのですが、8番目の『沈黙の力』だけ買い損ねていました)

文献リストにもあるように、4番の日本語版『力の話』だけは当時、講談社学術文庫から別の翻訳者で出ていてタイトルもまったく異なる『未知の次元』という名前でした。

この巻だけ版元が異なる理由については、あらためて『力の話』のシリーズの時にお話します
『未知の次元』は、この「まとめ買い」の時に一緒に買いました。ところが、なんと買ってからすでに持っていることに気づき、しばらく『未知の次元』を二冊本棚に並べていました。

『未知の次元』は、その後、開きもせず、そしてこれがまさか自分がすでに原著では読んだ『力の話』だとはまったく気づかず2016年に至るという体たらくでした。

まとめ買いした二見書房の和訳本をあらかた読んでから、たしか原著ではカスタネダが高いところから飛び降りる話を読んだのに、和訳本にそのエピソードがないな?などと思っていたのは翻訳版の『未知の次元』を読んでいなかったというのが真相でした。

そこで再度カスタネダの本を検索すると『力の話』というタイトルで2014年にあらためて太田出版から二見書房版時代の真崎義博さんの訳で出版されていたことを知り買い求めました。

二冊持っている「未知の次元」の一冊目は、私の「自炊生活」でPDFになってしまいました。二冊目は、長らく行方不明になっていたのですが、2016年10月、なぜか職場のデスクの引き出しからひょっこり出てきました。以下が二冊の奥付にある刷数です。

未知の次元(一冊目):1993年6月10日第1刷
未知の次元(二冊目):2000年8月21日第7刷

つまりこの4巻目は英語版も入れると四冊持っていることになります。

二見書房のカスタネダのシリーズはどうやら現在(2023年)絶版になっているようです。太田出版からは、現在初期の三巻、『ドン・ファンの教え』、『分離したリアリティ』、『イクストランへの旅』が新装版として発行されています。

太田出版の新装版はこざっぱりしてますが、私は二見書房版の装丁がオリジナル本と同じ絵柄なので好きです。

2016年、友人におすすめ本として二巻目の『分離したリアリティ』を贈ったことがあります。今はもう手に入らない二見書房版でしたので今でも所有してくれているといいなと思っています。

(初出:2016年6月1日「第三次カスタネダブーム」、改訂:2023/5/24「日本語版の系譜」)