(ご注意)少し性描写があります。
カルロスは、なかば強引に部屋につれこまれます。
ドニャ・ソルダードがナワールに習って作った粘土板の床は、呪術の力がそなわっていて、カルロスは、ドン・ファンがドニャ・ソルダートを弟子にしていたのだと思い至ります。
粘土板とはリアル呪術な感じがします。
ドニャ・ソルダードが、いきなりスカートをぬいで股のあいだをなでつけながら「二人はひとつになるんだ」と叫んで迫られます。(環23)
戸惑うカルロスに、彼女はドン・ファンにカルロスを誘惑するようにいわれたといいます。
ムードが高まっているならいざしらず、このような露骨な態度で誘惑できると思う表現が理解を超えます。これに類する表現が他でも散見されているし、Amy Wallaceの著書にも実際にそんな場面があります。西洋人文化とわれわれの違いでしょうか?
その後、車に逃げ込み脱出しようとするカルロスを巡って表にいた犬も交えた三つ巴の争いが繰り広げられます。
強力な呪術で脱出がかなわないと見たカルロスは再び家に逃げ込みます。
その後、カルロスとドニャ・ソルダードの対話が続きます。
彼は、パブリトもネストールも自分も、もう何年もドン・ファンやヘナロの弟子として修行しているのに、いっぱしの呪術師になれていない。
なのに、ドニャ・ソルダートがこんな短期間でなれるのだろうか?という疑問を持ちます。(環30)
私も不思議です。この後に登場する四姉妹、特にラ・ゴルダの熟練度が不思議です。
ちなみに、ラ・ゴルダ(la Gorda)のgordaは太った女性というスペイン語だそうです。
二人は、自分たちと風向きについて話します。
ドニャ・ソルダートは北風なのだそうです。(環40)
この巻以降、フィクションであることがわかっているのに、こうした意味深なメッセージやシンボルについて記す必要があるかどうか迷いましたが一応記載することにしました。
ドン・ファンがラ・ゴルダ(la Gorda)に関わっていた(要するに男女の間柄だった)とドニャ・ソルダートがいいました。
カルロスは、ドン・ファンと女のかかわりをこれまで聞いたことがありませんでした。(環43)
私たちもです。実在(従来?)のドン・ファンは、普通の家庭人のようでした。
ドニャ・ソルダートは、ドン・ファンに自分の「方角」を変えられたことをカルロスに告げます。カルロスも実は、同じことをされたといいます。
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わたしはそのことについて人と話したことが一度もなかった。
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この展開は、「テンセグリティ」と同じで、カスタネダが後から発想した概念だから、このような言い方で説明しているのだと思います。
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(ドン・ファンが)20フィートくらい離れたところに小さな火を二つおこした。
首を左にねじって肩を動かさずに目をもう一方の方に向けさせた。
新しい方角は南東だった。(体術)(環45)
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ドン・ファンのガヘ(ひょうたん:gourd)と盟友やメスカリトとの関係についての説明がされた後、風と女の関係について述べられています。(環51)
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そよ風は東。陽気で、口が上手で、あてにならない。
冷たい風は西。機嫌が悪くて、ゆううつで、いつももお思いにふけっている。
暑い風は幸せで、放埓で元気いっぱい。南風。
強い風は北。精力的で、人のものを取りたがって短気。
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血液型占いのようなイメージです。
(初出:2016年12月3日)