「これはダメだな」とカルロスが言った。「摘む前に乾いていなければならない」
John Wallace(Amy Wallaceとは無関係の人です)が手を伸ばし少しちぎって匂いをかぐとなじみのある香りがした。
彼は少し齧ると言った。「カルロス。これは野生のセロリ(wild celery)ですよ」
カルロスがニヤっとした。「そうだよ。ワイルド・セロリだ。いいものだ。アンゼリカは凄い。前にUCLAの有名な植物学者に分析をしてもらったことがある。何も(幻覚性の物質が)入っていないそうだ。何もない無害なものだ。10ポンド食べても何も起きない。だが呪術師にとっては重要なものだ。その煙は偉大な明晰さをもたらすのだ」
明晰さは「敵」じゃなかったでしたっけ?
John Wallaceと妻のRuthは空港に用事があったのでそこで他のメンバーと別れて町に戻ったが途中でRuthが具合が悪くなった上、道に迷いVenice Boardwalkを車で走ってしまい交通違反キップを切られた。なんとか空港にたどり着いたが、その帰りロスアンゼルスは大雨に見舞われ車のワイパーが焼き切れてしまった。
ほうほうの体で家に近づいたときRuthの上着のポケットに枝が入っているのに気が付いた。
カルロスは、彼らに「力の場所」からは何も持ち帰ってはいけないと警告していたのだ。
「わざとじゃないわ」とRuthが言った。「いつの間にか入ってたのよ」
「どう入ったかなんてどうでもいいから、さっさとそいつを窓から捨ててくれ!今すぐ!」とJohnが言った。
この二人は、少しイってしまってるような連中ではない。だけど感受性が強く人に影響されやすいところもあった。だからカルロスの謎めいた言い方の「力の場所から何も持ちだしてはいけない」を真面目に取ってしまったのだ。
Russも真面目に受け取った一人だった。夜、自転車に乗って家に帰る途中、いきなりとんでもなく大きな野ウサギが突然現れて彼を見つめたのだ。
あまりに驚いたRussは、自転車から転げ落ちてしまった。そしてそのままじっと目を閉じた。盟友や予兆はどこにでも現れる。野ウサギはしばらくRussを見つめると飛び跳ねてどこかへ去っていった。
このような奇妙な事件に遭遇したのは彼らだけではない。
私の古くからの友人Linda Cornettはカスタネダの信奉者でサイン入りの『イクストランへの旅』を持っていた。彼女はそれをベッド脇のテーブルにいつも置いていた。
ある日、彼女の娘、Paula―彼女もまたカルロスの信者だった―が母親の寝室に入ったら本の上に大きなカラスが乗っていたのだ。
カラスはおそらく空いている窓から入ってきたのだろう。それにしてもカスタネダの本の上にカラスとは。
おそるおそるPaulaがカラスに近づいてみるとカラスは右足に銅のリングをはめていた。
そのリングには小さくアステカのシンボルが刻まれていたのだ!俗人ならなんとでも合理的な理由を思いつくだろう。だが、彼女たちはこれを予兆とみた。
だが、こうした話もJohn Wallaceが見た夢に比べたら驚くことの程でもない。
(初出:2018年8月7日)