『ドン・カルロスの教え』が長編でしたので、少し口直しで休憩をとりたいと思います。1
休憩とは言え、本稿では、結論めいたことも触れておきます。
BBCのドキュメンタリーの中に、Jay Fikesという文化人類学者が登場します。
Dr.Fikesは、私のこの一連の「Googleの中のカスタネダの旅」で、ひと様のサイトで度々見かけた名前ですが、時間の関係でこれまでサラっと流していた人物です。
番組で出ているスーパーによると
———-
Dr. Jay Courtney Fikes Yeditep University, Istambul
———-
トルコのイスタンブールにある・・・なんて読むのかイェディテップ大学ですか?
——の研究者の方です。
今回、番組では大変重要な役割を果たしていましたので、あらためて検索したところご自身で立てられているサイトがありましたのでご紹介まで。
JayFikes.com
http://www.jayfikes.com/home.htmlhttp://www.jayfikes.com/home.html
そこに「カスタネダ外伝(Castaneda Sequel)」というコーナーがあります。
http://www.jayfikes.com/castaneda-sequel.html
番組の中で、Dr.Fikesは、ドン・ファンはヤキ・インディアンではなくウイチョル・インディアン(Huichol Indians)だったと断言しています。
実際に、彼がドン・ファンの原型となった人物だろうと結論付けたシャーマン Ramon Medina Silva(故人)にたどり着き、未亡人のインタビューに成功します。彼が収録した録音テープで彼女は確かにカスティネーダ(カスタネダ)に会ったと証言しています。
デミルは、ヤキ・インディアンがペヨーテを使う習慣がないことからドン・ファンの実在を疑っています。
一方、元妻のマーガレット・カスタネダとカスタネダの養子、C.J.カスタネダは、カスタネダがフィールドワーク先から寄越したハガキを出して証拠だと言っています。
C.J.にいたっては、カスタネダが保管している山のようなフィールドノートを実際に見たと証言しています。
Amy Wallaceの本で、ドン・ファンが去った(亡くなった)後、カルロスが新たな師を求めてうろたえている様子が描かれています。
1976年、エイミーの兄夫婦(David and Flora)はカルロスとロサンゼルス図書館の資金援助の会でたまたま遭遇しました。
カルロスはいきなりドン・ファンがこの世界から去るために燃える準備をしているととりみだしています。
この年は、一般にドン・ファンが1973年に去ったといわれている時期とかなりずれています。(Amy30)
「カルロスは絶望的になっていて他の本物の先生を求めていたが、どいつもこいつも偽物ばかりだと失望していた」(Amy31)とあり、ティモシー・リアリーのパートナーやら太極拳の教師やらヒンズー教のグルの聖水(実は尿)の話などが面白おかしく紹介されています。
1960年に出会ってから16年、呪術の修行につとめドン・ファンから免許皆伝をもらっているような人物が今さら「本物の」先生を探すでしょうか?
(エイミーもそう思ったのでわざわざ書いたのでしょう)
私は、カルロスが新たな先生を捜しているこのエピソードから逆にドン・ファンに相当する師匠(たち?)は実在していたのだと考えています。
そして、うろたえているくらいなので、呪術も極めていないし、最後まで戦士にもなれず真実も「見る」ことができなかったのです。
「分野」を問わず先生を求めている節操のなさからドン・ファンの原型となった師匠は複数いるという印象を深めました。(もちろん「師匠」に相当する文献もたくさんあったことは想像にかたくありません)
シリーズ後半でドン・ファンがいろいろな場所に家を持っていたという説明があります。それは”ドン・ファン”が何人もいたからなのではないでしょうか?
Dr.Fikesは、彼が専門とするウイチョル・インディアン(Huichol Indians)のシャーマンと限定していますが、カルロスの本にこれまで登場してきたインディアンの部族の中には他にもペヨーテを使う部族があります。
ドン・ファンのルーム・メイトだったドン・ヘナロが属するマザテック・インディアンもその一つです。
だからマザテックインディアンの中にも、ドン・ファンやヘナロのモデルがいたのだと思います。
ひょっとするとドン・ファン自身もマザテック・インディアンだったかもしれません。
番組の中でDr.Fikesは、ドン・ファンが一般的な呪術師が行う祈祷や治療を行わない変わった呪術師だという話をしますが、カスタネダの作品中で、ドン・ファンは昔はやっていたが自分はもう呪術師ではないと言っていますし、若いインディアンたちも、ドン・ファンは昔はすごい呪術師だったらしいけど、すっかりヤキが回っていると言っています。
参考までに、ドン・ファン・シリーズに名称だけでも登場している部族を羅列しておきます。
■ドン・ファン・シリーズに登場するネイティブ・アメリカンの部族
3)ヤヒ(Yahi)
6)ヤノマミ(Yanomami)
※この南米の部族だけはフロリンダ・ドナーが扱っています。
(初出:2016年11月16日)
- この記事は、上記のように『ドン・カルロスの教え』投稿の終了直後2016年11月16日に公開されました ↩︎