愛する人が亡くなり、友人たちが姿を消してもう9年が経つが、まるで昨日のことのように思えるし、あれは別の人生だったようにも思える。
特にフロリンダが恋しい。カルロスの病気の末期、魔女たちは私の家に来てくつろいで屋敷の生活のプレッシャーから逃れようとしていた。
フロリンダとはいつも映画ばかり見ていた。
だから、その後何年かは映画を見ることができなかった。どの映画館にいっても彼女がいる気がした。今でもよく訪れた場所にいくと気分が沈んでしまうことがある。
昔の”ファミリー”にばったり会うような気がしてしまうのだ。
だから、私はロスの中だがLos Felizに引っ越しをした。ここはカルトのメンバーは誰も来たことがないはずだ。
母が亡くなる頃、彼女がくれた宝石を、さようならの手紙をそえてメンバーにあげたことがある。一人は私の手紙を誤解して、「これでまた友達になれるわね!」と電話でいった。友達にはなれなかった。私は敵なのだ。
私の友人の一人は、外部メンバーだがワークショップに参加したことがあった。
彼女が残った中心メンバーにばったり会ったことがあるそうだ。
「最近、会わないけどEllisはどうしてる?」といったら彼女は嫌そうに顔をしかめたそうだ。これだけ長い間、呪術の修行をしていて彼女はまだカルロスが教えていた「白紙の慈愛を与える小切手」(the blank check of affection)を切れ(発行でき)ないのだろうか?(私の個人的な感情とは別に、あなたを愛することができる能力)
それと彼がいつも言っていたように人を裁くなということも。たしかに私たちは言葉よりそれらを実際に学んでいる。
カルトを去ったものは誰もが安堵の気持ちと失った年月に対する後悔をしている。私はいまだにこの両者にさいなまれている。夢を見続けている。カルロスと愛し合っている夢を見る。彼にみんなの前でののしられる夢をみる。どれもとてもリアルだ。
私の意識の深い部分はまだ治っていない、おそらくこれからも。
『Sorcerer’s Apprentice』が出版され、賞賛を受けた。L.A.タイムズのベストセラー作家になった。私は数えきれないほどのドキュメンタリーに出演した。アメリカの作品からロンドンのBBCの作品に至るまで。イタリアの映画製作会社の手になるものはいま進行中だ。それはカルロスとフェデリコ・フェリーニやマルチェロ・マストロヤンニとの関係に関するものだ。
読者たちから自殺を思いとどまったとかパートナーや家族との関係がもとにもどったとか感謝の手紙をもらった。彼らの中にはカルトと縁を切る勇気をもてたという読者もいた。
悪意に満ちた手紙ももらった。殺すと脅されたり、カルロスがまだ生きているので会わせてやるといった気が狂った人間からも届いた。
Haines Elyのラジオ番組「The Mystery Hour」への出演は記憶に新しい。Hainesはカルロスとは会ったことがないがフロリンダとTaishaを知っていて、二人となんどもキャンプなどにでかけたことがあるそうだ。
私は調査は進めていないが、そこで信憑性のある話としてドン・ファンのモデルの可能性のある人物のことを彼から聞いた。
このキャスターとラジオ番組に関しては検索しても情報がありませんでした。同名のテレビ番組がありましたが、別のもののようです。
(初出:2017年3月15日)