Maya11『カルロス・カスタネダとの魔法の旅』9(?)

原著では、編集ミスで第9章が抜けていますが、ここでは便宜上第8章の後半を9章としました。

1957年の3月。しばらく忘れていたこのエピソードを思い出した。

上記の「この」は、ひとつ前のチャプターのカルロスが作り上げた?女性の名前がマーガレットの母親の旧姓だったという話です。

私は当時、Pacific Bell(日本のNTTに相当する通信会社)のオーディオ・ヴィジュアル部門で働いていたので電話のディレクトリーを使って、Sue Childressを見つけて彼女に電話した。

彼女はLACCのクラスにはいなかったし、彼女にはブラジル人の知り合いもいなかったがブロンドで彼女自身がライターを職業にしていた。

彼女と翌日、お昼を食べる約束をした。

カルロスにこの話をすると、あの名前は僕が適当に自分と君の母親の名字を組み合わせて作ったいたずらだよと言い、私のジェラシーを喜んでいた。
でも、もしかするとカルロスは私に本当の話をしていたのかもしれない。

それとも、カルロスの作り話を受け止めた私が、彼女を実在の存在として出現させたのかもしれない。

カルロスは、この現象よりも私の意志の強さに驚いていた。

カルロスが彼女のスケッチを描いて私に見せた。

Pacific BellのL.A.オフィスのそばのレストランでSue Childressと向き合った私は言葉を失った。彼女はカルロスが描いた人物とそっくりだったのだ。

だが、彼女はだれも南アメリカ出身の知り合いはいないといった。
ただかつてLACCで陶器のクラスにいたことがあるといった。

彼女は、私の話を辛抱強く聞いて微笑んだ。すると、そこには!!
カルロスが言っていたとおり、彼女の糸切り歯(incisor)には、被せものがあったのだ。

二日後にカルロスは彼女と会ったが、彼が想像した通りの女性だったが会ったのは初めてのことだと行った。
私は結局証明できなかったが、彼が彼女のことを知っているに違いないという印象を持った。

「いつか」カルロスが手紙に書いた「きみがおこなったことの意味をわかると思う。今は理解の埒外だけど、いつかわかるはずだ」

これはいったい何だったのだろう?
ひとつだけ確かなのはカルロスは自分のミステリアスなイメージを作っていたということだ。

今になって、あの日、Sueとカルロスと私があのアパートでこのエピソードを話し合ったことを思い起こしてみても、Sue Childress(今は、Sue Parrottだ)、彼女は私がいったいなにをしたのかわからないと言う。
Sue Childress ( Parrot )について新情報を書き加えました

不思議な事件で出会った相手とその後も付き合いを続けているというのが興味深いです。

カルロスは、私が強力な女性で私が望んだとおりの現実をアレンジして、実際のSue Childressを見つけ出したのだと考えていたようだ。

だが、彼女の名前を考えたのも彼女の様子を描いたのも結局のところカルロスなのだ。

1956年に彼があのLACCの狭いキャンパスで彼女を見かけていたこともあるかもしれない。彼女は忘れているが彼と一緒のクラスにいたことがあるのかもしれない。
いろいろな説明を思いつけるが、カルロスだけが真実を知っているのだ。

カルロスは、ごく普通の当たり前のことを意味深い神秘的なものに作り上げるのがうまい。

一年後に私がSueとアパートにいたときカルロスが電話を寄越した。

Susie、君のお母さんだけど、彼女は喉に問題が起きているよ」彼が言った「重大な問題になりそうだ

明らかに、彼はSueに自分が予言能力があるように見せたかったのだろう。これだけで彼女を怯えさせるのに十分だった。

私は母が今にも死んでしまうのではないかと心配になったわ」とSueが当時を思い出して語る。「母は隠れてタバコを吸っていたし喉がいつもいがらっぽかった。でも、今も元気で生きているしタバコもやめてないわ。あとみんな母の電話番号を知ってるから

おそらくカルロスは私が知っていたSueのお母さんと電話で話した経験を使ったのだと思う。

Sueが私の家にいるタイミングを知って電話をかけてきたのだ。
彼は、女性に印象づけるために自分が超常能力を持っているフリをしているようだった。

続いてSueの母親のディナーに招待されたとき不思議な行動をとって印象づけた話が披露されていますが割愛します。繰り返しますが、「友人になり度」がすごいですね。

この後、1956年ごろ、カルロスが、オルダス・ハックスレー『知覚の扉』を読んで大きな影響を受けていた話が書かれています。

ハックスレーは、まさにカルロスが目指している存在だった。

『知覚の扉』は、私も大好きでこれまで何度も登場しています。

カスタネダ関係の記事でのこれまでの言及はこちら。

”フォロワーズ(The Followers)”の話(前篇)(3)『ドン・カルロスの教え』(5)(2016年10月19日水曜日)
マーガレットの話(3)『ドン・カルロスの教え』(10)(2016年10月24日月曜日

(初出:2018年6月9日)