※この章は、重要です。
カルロスは、Vermontにある自分の部屋を引き払って823 South Detroit Streetの私の部屋に移って来た。
彼は、Haggarty’sの仕事をつづけ、私も電話会社勤務で忙しかった。
彼は夜遅くに帰宅、夏ごろには週末も家をあけるようになった。
時に何時間か、次第に何日も家に帰らないようになった。
はじめは他に女性ができたのでは?と疑ったが彼は否定した。
カルロスは、砂漠に薬草の勉強にでかけていて、”ある男を見つけたんだ”とある日言った。だが、彼がインディアンで先生である以上のことは何一つ教えてくれなかった。
初期のフィールドトリップは、彼がとっているカリフォルニア民族誌(California Ethnography)の授業の延長だった。Clement Meighanという考古学者(archeologist)が教える授業で人気があった。
彼の第一作の本のクレジットの一番に載っていたのがこの人物だ。
この授業は毎年行われていてレポートが課題だった。インディアンとの直接インタビューに成功した学生は無条件にAがもらえた。
カルロスは、このレポートが成功すればいい成績がもらえるだけでなく大学院に入るのにも有利になると考えた。
レポートのテーマには、バスケット(籠)や陶器、農業など事欠かなかったがカルロスは、民族植物学(ethnobotany)に決めた。
60人のクラスメートの中で実際にインディアンとコンタクトした人間は三人だけだった。一人は、大学生の中で一人見つけ人種問題をテーマにした。もう一人は、フレズノ( Fresno)に住んでいる友人を通じてインディアンを紹介してもらい月並みなインタビューを行った。
カルロスだけが情報提供者を見つけたのだ。
実際のところカルロスは、何人ものインディアンとコンタクトし何度かMeighanの指導を受けるために彼のオフィスを訪れている。
始めの頃、カルロスは、Palm Springに近いCahuillaのインディアン居留地を訪れ、次にColorado River近辺のインディアンと接触した。
インディアンに他のインディアンを紹介してもらうのでカルロスは次から次へと情報提供者たちを渡り歩き、不思議な儀式や薬草の利用について学んでいった。
最終的に、彼はJimson Weed ( Datura inoxia)について深い知識を持っている男にたどり着いた。
それがカルロスの卒業論文のベースとなった研究だ。
「彼の情報提供者は、Daturaについて驚くほどの知識を持っていた。カリフォルニアの一部インディアンたちによって儀式で用いられるドラッグだ。だが、多くの文化人類学者は4、50年前に情報が失われてしまって研究をやめてしまっているテーマだった」とMeighanは当時を語っている。
「だがカルロスが見つけた人物は、いまでも大量にその知識を持っていてしかも使っていたんだ。彼が提出したレポートは、そのような知識を持っている情報提供者がいなければ成立しないものだった。素晴らしい内容だったので私は彼に研究を継続するように勧めた。
彼は、いまだに力の植物としてダツラを扱うことのできるインディアンがいると言った。これについては彼の最初の本に記されている。
彼は、植物の根のどの場所を扱うのかが重要だと言っていた。植物が雄なのかメスなのか、深い部分の根なのかについてはシンボリズムや空想に基づいていて、薬理的な意味があるかどうかは疑わしいと思う。
彼は、いろいろな場所にでかけていき人々の信仰について尋ねて歩いた。私の知る限りでは、ダツラにまつわるこうしたことがこれまで出版されたことはなかった。私は、カリフォルニアの文献をくまなく読んでいたが、インディアンが儀式で扱うドラッグについて尋ねはじめると抵抗にあうため、このような情報を得ることができていなかったのだ。私はカルロスのレポートに感銘を受けた。彼は、これまでの文化人類学が得ることのできなかった情報を手に入れたのだ」
(※中略)
「カルロスが情報を得た相手は、彼が本でドン・ファンと呼ぶ人物だったのだと思う」とMeighanは言う。「カルロスは、本の中で明示してはいないが、おそらく同じ人物なのだろう。彼は、情報提供者を部族と地域だけ明かしていて、その人物はYuma族とYaqui族の混血だと言っていた」
ドン・ファンは、父親がヤキで母親はユマ・インディアンである(『呪術と夢見 - イーグルの贈り物』 )と言っています。
NAVERの「カルロス・カスタネダまとめ」によると、自称ドン・ファンのモデルだったというカチョーラは、1909年、北米大陸 ソノラディザード(Sonola)で、ヤキインディアンの父とトルテックインディアンの母のもとに生まれる、とあります。
文献によるとヤキは、儀式では薬草を使わないそうだが、カルロスは気に留めなかった。彼は、本当の呪術師を発見したのだ。
(初出:2018年7月5日)