~四つの的~
1962年4月8日の「日記」、ここで初めて有名な『知者(man of knowledge)』という言葉が登場します。

知者になるには、四つの自然の敵に挑んで打ち負かさねばならないそうです。
敵というか試練が四つ、というエピソードは、『太陽へとぶ矢』という絵本を思い起こします。

(プエブロ)インディアンの子が、いじめにあいまして、こん畜生というので自分の父親を探す旅にでかけます。
実はこの子供は太陽の子供でして。
それに気が付いた村の年寄りが、その子を矢にかえて太陽に向けて射ます。
太陽は四つの試練をのりこえたら自分の子供と認めようといいます。
試練はそれぞれキバ(プエブロのキバ)の中に潜んでいる「ライオン、へび、ハチ、稲妻」で子供は彼らと戦います。
今回、このエントリーを書くにあたって、「キバ」ってなんだか知らなかったけどなんだろう?とあらためて調べてみました。
インディアンなのでテントのことだろうなんて勝手に思ってました。

しかし、よくよく考えてみればそちらはティピーでした。
たしかにテントの中に稲妻じゃ燃えてしまうし。
さて、ドン・ファンのいう知者への道を妨げる四つの敵です。
第一の敵:恐怖(fear)
第二の敵:明晰さ(clarity) (恐怖を克服すると得られるが、それが仇となり盲目的にさせる)
第三の敵:力(power) すべての敵のうちでも一番強い。無視することで負かす
最期の敵:老年(old age) もっとも残酷な敵だ。完全に打ち勝つこともできずただ戦うのみだ。
そのもっとも残酷な敵に毎日向き合っている私ですので、少し引用してみます。
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(老年に向き合ったとき)この時こそ一切の恐怖も心のせっかちな明晰さもなくなる時なんだ━あらゆる自分の力はチェックされ、同時に休息への望みを強くもつ時でもある。(中略)引退したいという望みは明晰さ、力、知をすべて無効にしちまうんだ。
だが、その疲労を脱ぎ去ってずっと自分の運命を生き抜けば、仮に最後の無敵の敵に打ち勝ったほんの少しの間だけにせよ、その時知者と呼ばれるんだ。明晰さ、力、知のその瞬間で十分なんだ
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この四つの敵というのは非常に教訓めいたトピックですが、なぜかこの後、二度と登場しません。
身も蓋もありませんが、よくよく考えてみると割と常識的なアドバイスかなという気もします。
(初出:2016年7月11日「四つの敵 (教え 3 ダツラの体験と煙の準備(5/5))」)