61年の暮れから翌年の正月にかけて、カルロスはメスカリトについてドンファンを質問攻めにします。
「盟友」が力を与えてくれるのに対してメスカリトは、やさしくて保護者や教師のようなものだとドン・ファンはいいます。
じゃ、教師なら何を教えてくれるのか?と尋ねると、
「正しい生き方を教えてくれる」と言います。
ですが、本の中ではその正しい生き方が何なのかということは、その後もあやふやなままです。この下りのあと、彼はメスカリトと再会(を服用する)します。
その場面でカルロスとメスカリトの間で「対話」が行われますが、カルロスが伝えた対話の中身については書かれていません。
カルロスは日常生活の中でさまざまな悩みを抱えているらしいのですが、その悩みについては読者に知らせてくれません。(実は、彼は複雑な間柄の子供との関係で悩んでいますが、読者には詳しいことは知らされません。彼の子供についてはこのブログの別の項目で明らかになります)
1962年1月30日の記録に次のような会話があります。
「メスカリトがあんたを連れて行ってくれるとき何が見える?ドン・ファン」
「そういうことは普通の会話の時は言えんな」
これをはじめて読んだ時にはサラっと流してしまいますが、その後、ドン・ファンの教育には「普通の(状態)の会話の時」(通常の意識状態)と「普通じゃない意識の時の会話」(高められた意識状態)の二種類があることがわかります。
第1巻から第4巻までは、カルロスが「普通の時」の状態の記録になっていて、実はその期間に体験していた「普通じゃない状態」についてはまったくカルロスの記憶の奥底に封印されていたということが後に第5巻、第6巻の二冊で明かされます。
この第5、6巻では、記憶から抜け落ちていたそれらの記憶を同期の呪術師たちの力を借りて呼び起こす展開になっていますが、フィクションだと考えています。
私のスタンスはネッシーやUFOがいたらエキサイティングだという話と同じく「ロマンとして本当の話だったらいいのにな」です。
今も本気でカルロスの教えを修行している人たちがいるらしいので、彼らからみたら不謹慎だと思われるかもしれません。

ドン・ファンによるとメスカリトが人を連れて行ってくれるような別の世界があるそうで、そこには空を通って行くのだそうです。
カルロスが「え?そこは神のいる天国かい?」と尋ねるとドンファンは、
「お前頭おかしいんじゃないか?わしは神のいる所なぞ知らんぞ」と馬鹿にされます。
意外とリチャード・ドーキンスとドン・ファンは気が合いそうです。
(初出:2016年7月12日「メスカリト問答 (教え 4.メスカリトとの再会(1/4))」)