カルロスは、ドン・ファンについてしばらく「力のあしどり」の練習を続けますが、合図のフクロウの声を出しすぎたので他の存在(精霊など)にまねされる危険がある。
だから、いますぐ山を去ろうと言われます。
遅めに走るのでついてこいといわれドン・ファンを追いますが、途中で不気味な存在に並走され、ニセのフクロウの声に翻弄され、しまいには四角くて黒い扉のような存在を見ます。
怯え切ったカルロスがなんとかドン・ファンとめぐりあい以上を報告するとカルロスが遭遇した存在は、夜の実体あるいは山の実体というものだといいます。
それらは昼の間もそばいるが夜になると簡単にわかるようになるのだそうです。
カルロスは、まだ力が十分でないのに、それらの存在とかかわったのでしばらくは闇で一人にならないように言われます。
自分のベッドならいいが山では夜一人になるのはだめだと言われます。
うーむ、じゃやはり、水の精霊につけまわされてもロスで歯を磨くのは構わなかったのですね。
「夜の実体はおまの左側を動いとった」
「奴はおまえの死と溶け合おうとしてたんだ。とくにおまえの見たあのドアはな」

あの四角くて黒いのは、やはりドアだったのですね。『宇宙の旅』のモノリスでしょうか。
本当は、ドン・ファンが仲間と共謀してカルロスを脅かそうとしているのではという疑念をあらわすと、自分の理解を超えたことにいちいち説明をつけようとして自分を苦しめないように言われます。(認知的不協和といいます1)
カルロスは、それなりに力をつけはじめていて「力の戦い」と対面した思い出を得たってことが重要だと言います。
「あの晩おまえが見た橋とかほかのあらゆるものは、いつかおまえが十分な力をもったときにくりかえされるだろうよ」(pending)
ドン・ファンは今後の修行のために「わしはもうおまえのために相応の敵を見つけてやったぞ」と身体を伸ばし(体術)ながら言います。(旅250)
「ぼくのためにどんな敵を見つけてくれるつもりなの?」
「残念だが、わしらの同胞しかふさわしい敵はおらんな」(旅250)
この「相応の敵」というのはラ・カタリーナのことですね。
デミルは、ラ・カタリーナとの対決の日付を明らかにしないことを指摘し批判しています。カルロスが発表する内容と日付を絶妙に前後させて私たちを混乱させているのだと書いています。(pending)
この一文で判明したことをメモしておきますと、
1961年11月23日 ドン・ファンがラ・カタリーナに脱臼させられた(フリ)
1961年12月3日 捻挫がすっかり治っている。カタリーナを狙うが失敗。
それから数か月後に”対決”があったと書かれています。
1962年4月8日に、この「力のあしどり」事件があって、その段階で「相応の敵」を見つけておいたのですから、ラ・カタリーナとの対決は4月9日以降ということがわかります。
さらに同じ4月8日は「四つの敵」に関する議論があって4月15日には「四つの敵」の議論が続きますので、おそらくカタリーナとの対決は、4月16日以降かと思います。
1962年6月23日は、キノコ探しの旅(ペヨーテ探しだったという)に出ますので、「対決」は、それより前、つまり、
4月16日~6月22日までの間におきていたかもしれません。
実は、途中、5月14日に呪術師サカテカ(ドン・エリアス)を訪問して邪見にされますので、「対決」は、
4月16日~5月13日
5月15日~6月22日
の二つの期間に絞られたのでは?どうでもいいですか?しつこいですね。
実は、このあと17章にさらなるヒントがありまして対決はもっと後に起きているようです。
しかし今回は仮の設定としておきます。
しばらく黙り込んだあと、ドン・ファンが口を開きます。
「前に、強いからだをつくる秘密はなにかをすることじゃなくて、しないことにあると言ったろう」
「そろそろ、いつもしてることをしない時期だな。ここを発つまですわって、”しない”んだ」
とわけのわからないことを言いだします。
いきなりカルロスのノートを取り上げやぶの中に放り投げてしまいます。
それから木の葉と葉のあいだの空間を見るようにいいます。
これはいわゆる「図と地」(figure and ground)というやつです。
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まず一本の枝の葉の陰に焦点を合わせることからはじめ、最後には木全体に進めて、目が葉にもどらないようにするのだ、というのも、自分の力をためるための大事な第一歩は、からだに『しないこと』をさせることだからである。
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と伝えます。
その指示に従い、実際に目を使いだすとカルロスはあっという間に、ヤブに投げ込まれたノートを見つけます。
それは『しないこと』のおかげなのだそうです。
(初出:2016年9月27日)
- 「認知的不協和」
自分に都合の悪い事柄に対して不合理だったりたとえ荒唐無稽であっても単純でわかりやすい理由を見つけて「言い訳」にする心理状態をいいます。陰謀論が典型的な事例です。(正確には不協和が起きていることに対して無理に協和すること) ↩︎