教え2『ドン・ファンの教え』序文(2/3)

~出会い~

1960年、カルロスは、アリゾナのとある町(後にノガレスと判明)の長距離バス(グレイハウンド)の停留所でドン・ファンにはじめて出会います。

写真は、1965年秋頃のオレゴン州セイラムのターミナル。

まさに彼らが出会った当時の風景です。

GMC PD4106 ready for a fast trip on the new Interstate 5 highway to Portland and beyond. This depot in the state’s capitol city was linked by Teletype to Greyhound dispatchers, and before the bus departs, the driver will make an entry in the Register book used to log passenger counts and on-time information for the Scheduling department.

コラム「山んばと空とぶ白い馬」でも触れていますが、その魔力?を恐れられる「呪術師(ディアブレロ)」が普通にバス停で一般人と混じって待っている状況が面白く、妙なリアリティが感じられます。

シリーズ各所で描かれているカルロスがドン・ファンを車に乗せて移動するシーンも機械文明と古代の呪術のアンバランス感が奇妙です。

はるか10年後に明らかになりますが、この出会いの瞬間からカルロスは蜘蛛にからめとられた餌食のように呪師の世界の罠にはめられてしまいます。

(と書いておきながら、シリーズ後半は完全な創作ですので、ドン・ファンが始めから狙っていたというこの話は眉唾です)

カルロスは、インディアンが儀式に使用する幻覚性植物について知りたくて彼のもとに通い詰めましたが、信用されるまで1年かかりました。(1961年6月)

ハナからはめられていとすれば1年間、焦らされたともいえます。

6月23日が最初の(麻薬体験)セッションだそうです。

”セッション”という言い方はいかにもアメリカ人が「レッスン」や「カウンセリング」のことを言いそうなフレーズでこれまた西洋文化と土着の文化のチグハグ感がいい味を出してます。

○ドン・ファンは、1891年、メキシコ南西部生まれ。

1900年にメキシコ政府により中央メキシコに移住、1940年まで暮らします。

ドン・ファンの両親の話や、スペイン人の侵略との関係も後に少しずつあきらかになっていきます。

○カルロスは、1965年9月、恐怖に負け、もう修行を続けられないと判断し弟子をやめることにします。

この一巻目『ドン・ファンの教え』では、弟子を辞めたと書いていますが、結果としては、カルロスは死ぬまでドン・ファンの弟子であり続けることになります。

途中、女呪術師たちに殺されそうになったり、人前で大便を漏らしたりの数えきれないほどの間尺に合わないひどい目にあわされますが、意外と辛抱強く付き合い続けます。

(初出:2016年7月3日「教え~序文(1/2)~」)