「1960年12月17日、ドン・ファンの家をへとへとになってようやく見つけた」というエピソードから始まるこの本は、要するに時間を巻き戻して『ドン・ファンの教え』のスタート時点からこれまでスルーしてきていた重要な事柄をおさらいするという流れです。
ちなみにこの「へとへと」の詳しい話は後に『無限の本質』の中で詳細に書かれています。(pending)
西洋人の上から目線で無知なインディアン・インフォーマントとみなしてギャラで釣ろうとするカルロスにドン・ファンは痛烈な一撃をみまいます。
「わしの時間に対しては・・・おまえの時間で支払ってもらおう」(旅23)
またまたちなみにですが、フロリンダ・ドナーの本にも魔女メルセデスに同様にギャラ提供のシーンがあります。(メルセデスはドン・ファンより断然優しいです)
そんな対話のさなか「空軍のジェット機が低空飛行したために、そのあたり一帯がゴーっとうなりをたてた」という記述があります。(旅25)
想定されるドン・ファンの家のあたりを飛ぶ飛行機の履歴ってわかるのでしょうか?
さすがのデミルも空軍の飛行記録までは調べていないのでは?(pending)
ここでカルロスは「アリゾナの出身ですか?」と尋ねてます。
そしてドン・ファンはうなずきました。
お!これはタイシャ・エイブラーのドン・ファン(ジョン・マイケル・エイブラー)が言った出身と整合性がとれています。
と書いたものの、実はいったん、エントリーを投稿してから待てよと思い念のために英語版を調べなおました。
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“Were you born in this locality?”
He nodded his head again without answering me.
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Are you from Arizona?ではなくて「このあたりで生まれたのですか?」でした。
とすると、うなずいたドン・ファンは日本語訳と異なりアリゾナ出身にもソノラ出身にもとれるような言い方をしたわけではありませんね。
「今はここに住んどるが、本当はソノラで生まれたヤキ・インディアンさ」(旅25)
“I live here now but I’m really a Yaqui from Sonora.”
さて、これはどう考えますか?
ドン・ファンのいう”ここ”ってどこ?
日本語訳のアリゾナはというのは違っていたのですから、”ここ”がいったいどこなのか?ということです。もちろん「アリゾナ」ということもありえます。
”ソノラ”は、メキシコの州であり地方の呼び名です。
例)僕は今はここに住んでますが、福岡出身です。
この例では”僕”は、今は福岡には住んでいませんよね。
つまり、へとへとになって探したドン・ファンのこの家ってどこなんでしょうか?
もちろん日本語訳が意訳したようにアリゾナということも十分ありえます。
アリゾナにはツーソンのそばにデイビス=モンタン・エアー・フォース・ベースという基地があります。アリゾナ側のノガレスにも割と近いです。(といっても120キロくらいだけど)
ソノラ近辺にメキシコ軍の空軍基地があるかどうかは確認できていません。(pending)
飛行機の轟音を自分の意見に対する「同意」だとカルロスをからかうドン・ファンはパーコレータまで自分に同意しているといいます。
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パーコレーターのお湯がふっとうして大きな音をたてた。
「ほら聞いてみろ!」
「湯がわしに同意しとるわ」
「人はまわりにある何からだって、同意を得られるんだ」(旅27)
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カルロスは取材に写真とテープレコーダーを使いたいといいますが問題外だと言って断られてしまいます。(旅28)
でもカルロスはドン・ファンに内緒で録音したと思いますよ。
テープレコーダーについても検証したいと思います。
(追記2017/5/25:一応、検証しました。まさかチャック・ベリーが手がかりになるとは)
そうそう、しがないブログでしょうもないおさらいの途中ですが、ここまでの「検証ごっこ」で私は、「ドン・ファン」は「実在」した単数あるいは複数の人物だという意見に傾きつつあります。
このあたりどうでもいいよと言われそうですが、ま、趣味ということでいずれまとめて私の勝手な推理を書きたいと思います。
※ある国の王様の虐待のエピソードが語られますが、割愛します。
(初出:2016年9月5日)