『分離したリアリティ』のいよいよ最後です。
前回訪問したあと、数か月メキシコを訪れてなかったカルロスのフィールドノートは、1970年10月6日の最後の部分にはいります。
ドン・ファンの家につくとドン・ヘナロが一緒でした。
カルロスが前回、盟友との出会いに失敗した話をすると「ドン・ジェナロが二、三回わたしの背中をたたいた」(分離308)とあります。(体術)
彼はわたしの肩に腕をまわしてわたしを見つめ、それがわたしに落ち着いた安心感をあたえてくれた。
これはひょっとして、「肩甲骨の間」でしょうか?
そうだったらいいのですが。
と思っていたらヘナロが背中に石のような重みをかけたように感じ、最後には重くて横に倒れて頭を床にうちつけてしまいます。
「子泣き爺の技術」でしょうか。
ジェナロは、藪の中に入っていき。また山をゴロゴロと鳴らします。
するとその巨大な石が転がっているような音を聴くと、その石が実際に「見えた」ように思います。カルロスは音を”見て”いたのです。
ヘナロが戻ってきて「見たか?」と聞きます。
この体験後、数時間一人にさせられた後、ドン・ファンとドン・ヘナロが夕方戻ってきます。二人がカルロスを見つめると二人の目が巨大なプールの水のようにみえます。
ドン・ヘナロの目が普通の人間の四、五倍もあるように見えて恐ろしくなって戦闘態勢をとってしまいます。(体術)
ドン・ファンはヘナロが目でいじめただけだといいますが、カルロスはいじられっぱなしですな。
ヘナロが「隠れ身の技術」を見せてくれるというので一同は散歩に出ます。
前を歩いているヘナロに追いつこうとしますが、いつまでたっても追いつけません。そして、いつの間にか自分の後ろにいるように思えてきます。
1970年10月8日は、「隠れ身の技術」のおさらいです。
ヘナロはずっとカルロスの後ろにいたと聞かされて驚くカルロス。
その仕組みを説明するためにドン・ファンが地面に八つの点を描きます。
最初はここ第一の点にいる。そしてここからここへ第二の点移動するんだ。
人間の扱える点は、さらにもう6つあるのだと言います。
わしの知っとる限りじゃ、人間に扱える点は八つしかないのさ。

次に、カルロスは同じ木から同じ葉が何度も同じように落ちるのを見させられて、いまそばにいたはずのドン・ヘナロが16キロも離れた向こうの山のてっぺんにいるのが見えます。
そもそも十六キロも離れた人間が見えるはずはないと思った瞬間消えてしまいます。
私は、ウルトラマンの「富士に立つ怪獣」というエピソードを思い出しました。
一連の非日常体験をさせたのは、カルロスがなにもかも理解しようとするのがだめなんだと教えるためだそうです。
実践によってしか呪術師にはなれないのだから、金輪際わたしに説明するなどということはしないと言った。そして今すぐ帰れ、さもないとわたしを助けようとしているドン・ジェナロに殺されてしまうかもしれないと忠告してくれた。(分離324)
メスカリトも盟友も陽気なドン・ヘナロも、油断をするとすぐ殺すわけですか~
いったいどういう連中なのでしょうか。
ドン・ファンとドン・ヘナロの教育のかいがあってカルロスもようやく自分の知覚の不確かさを納得します。それにしても遅いですが・・・。
現実とは何かという思索も結局はわたしの知的操作にすぎなかったのだ。(分離324)
最後に、思わず泣きだしてドン・ファンを抱きしめた。
彼はこぶしで軽くわたしの頭をたたいた。それが脊髄を波打って下ってゆくような感じであった。酔いをさまされるような感じがした。(分離324)(体術)
これもひょっとして「高められた意識状態」関係の操作でしょうか?
(初出:2016年9月2日「分離17 ひとつの移行期」)