カルロスは、いったん帰宅してノートをまとめましたが、またドン・ファンに会いにいくことにしました。
中央メキシコの山間部の小さな町の市場にいるカルロスをドン・ファンが見つけ、パブリートとネストールが住んでいる町に立ち寄ることになります。
カルロスが「蛾の呼び声」を聞いていると、そこにドン・ヘナロが現れます。その代わりに、いつのまにかドン・ファンがいなくなっています。
車にドン・ヘナロを乗せてパブリートの家につきますが、ふと見ると乗っていた筈のドン・ヘナロもいなくなっています。
ネストールも乗せ、カルロスがヘナロに力の場所に行くように言われたというと、パブリートは、カルロスが迎えにきたときから車にはヘナロは乗っていなかったといいます。
三人は、山を登って巨大な崖の下にきて待つように言われていました。
ネストールは自尊心をなくす修行をしているので以前よりも若く見えるようになっていました。
ネストールは、現場で自分のスピリット・キャッチャーを見せてくれました。
ドン・ファンたちを待つ間、三人は雑談をし、パブリートの姉妹の話で盛り上がりました。ネストールは、一番上の姉貴は目つきだけでノミを殺せるくらい底意地が悪いといいます。
ナワールが姉の気性の荒さは認めていたが、”ナワール”が治してくれたおかげで元に戻れた、と打ち明けました。
この姉というのは、続巻の『力の第二の環』(『呪術の彼方へ』)で登場するラ・ゴルダのことです。
『力の第二の環』では、このパブリートの家族の話題から始まります。
私が『力の第二の環』を読んだのは、『力の話』をペーパーバックで読んでから実に、30年以上経っていましたから『力の話』の終盤のこのエピソードなど完全にスルーしていました。(『力の話』と『未知の次元』が違う本だと思い込んでいたくらいですから)
『力の第二の環』でパブリートの家族の話が当たり前のように始まったので、それまでのストーリーでパブリートの姉たちの話題が出てたのだろうか?と今回再読してみると、やはり、この箇所だけが最初でした。
カルロスは、パブリートもネストールもドン・ファンの名前を出さずに彼のことを”ナワール”と読んでいることに気がつきました。(力281)
周辺資料を平行して読んで来た現時点での私見&推測ですが、この『力の話』は、大部分が創作だろうと思うに至りました。
次の『力の第二の環』からドン・ファンが本格的に”ナワール”化します。また、パブリートの家族のエピソードを”膨らませて”いきますので前段の『力の環』で伏線を張っておくことにしたのだと思います。
Amy Wallaceの本を読み進めているとカルロスのイカれ具合が本当に激しいので当の本人も途中から物語とドキュメントの区別もつかなくなってしまったのかもしれません。
『無限の本質』の中に、弟子入りして日が浅いころ「大量の幻覚性植物」を投与されて自分がおかしくなるのではと不安だったという記述があります。(pending)
元々頭が良かったことに加えてクスリの影響で脳ミソが本格的におかしくなっちゃたのでしょう。それが老化にともないはげしく進行したと。
三人がおしゃべりをしていると、ふたたび「蛾の呼び声」が聞こえました。
彼らが怯えていると目の前にドン・ファンとドン・ヘナロが立っていました。
ドン・ヘナロとドン・ファンは、崖から飛び降りたり曲芸めいた技を彼らに見せますが、ひとしきり経つと、一連の不思議な現象が終わったとわかります。
怯えきった三人は、パブリートの家に逃げ帰ります。
家では、母親と姉たちが夕食の準備をして世話をしてくれます。
パブリートは年上のネストールが若返ってしまったので、まるで弟のような扱いで世話をしています。
(初出:2016年11月25日)