【注意】一部、性的な描写があります。
気味悪いかもしれませんが核心的要素ですのでご容赦を。
14.呪術師の大作戦
この章では、ドン・ファンが体の各所にあるチャクラのようなものを説明します。
呪術師の最終目的である(ドン・ファン・シリーズでいう「第二の抽象1」への)抽象的飛翔をするためには禁欲が前提となっているそうです。(飛翔254)
「13呪術師の敵」で屋敷に暮らす人数の総計を確認しました。ここでもドン・ファンが「我々は私を含んだ十六人と一匹からなるグループだ」と念をおしています。そのうち10人が女だそうです。(飛翔256)
この章は、タイシャの空手大会と並んで語られる青春時代の「反復」エピソードが紹介されます。
そして、このエピソードがドン・ファン一派とタイシャを結びつける重要な結節点ということが判明します。
タイシャが15歳のとき、アルバイト先のドライブインシアターの売店で、つきあいはじめたボーイフレンドとフードカウンターの上でセックスに及ぼうとします。下半身裸になったまさにそのとき、トイレと間違えて部屋に入ってきたドン・ファンに箒で背中をたたかれ外に追い払われ下半身裸のままの姿を大ぜいにみられ大恥をかいた、という顛末です。
タイシャは、この出来事をもちろん覚えていましたが、大恥をかく原因をつくった老人がドン・ファンだったとはこの時まで知りませんでした。
ドン・ファンは、間違えて部屋に入ったとき、箒で背中の上部をたたいてタイシャにナワールの印をつけたのだそうです。(飛翔266)
その印があるのでこれ以降、呪術師たちは彼女をトレースすることができたといいます。
ナワールであるドン・ファンは、うっかりミスはしない。にもかかわらずトイレと間違えてタイシャたちのセックス現場に出くわしたことは「予兆」だと判断したといいます。
ま、「予兆」だというところまではよしとしましょう。
でも、呪術師候補生はタイシャではなくボーイフレンドでもよかったんじゃないですか?
タイシャは、この事件を「5年ほど前のあの晩」と言っています。つまり、クララの家に来たのは19歳か20歳ということになります。
16.禁断の廊下
「15呪術師の瞳」では、前半の導師クララが去り、年上のネリダ・エイブラーという女呪術師が先生として登場します。(飛翔281)タイシャの両親が南アフリカ時代のエピソードも語られますが省略します。(飛翔284)
この16章で、ネリダはいきなりエネルギーを集めるといってスカートをまくりあげて自分の性器をタイシャに見るようにせまります。そしてネリダの特殊な子宮から出るエネルギーがタイシャをくつろがせます。(飛翔292)
カスタネダは、どうやら女性の性器~ヴァジャイナ~に関して偏執的な思い入れがあるようです。
いろいろな原始宗教には男根・女陰にたいする特別な扱いがあるように、秘教的色合いを自身の教義に加えてようとしたのかもしれません。
副次的な(あるいは主目的かも?)効果として性器に呪術的役割を持たせることで自身が女性信者と交わる理屈を立てやすいというのがあったのではとゲスな私は勘ぐっています。
カスタネダに限らずカルトの教祖は、どうしてもそのような傾向になってしまうようです。そのような外道に陥らない人物だけが本当の宗教者なのでしょうね。
ドン・ファン・シリーズ『力の第二の輪』では、ラ・ゴルダたちの母親ドニャ・ソルダード(Dona Soledad)がいきなりスカートをめくってカルロスに性器を見せ自分とセックスをしろとせまります。
”小説”の中のカルロスは、しおらしくふるまいビビります。
ラ・ゴルダもカルロスに同じようなふるまいをします。
ネリダ、ドニャ・ソルダード、ラ・ゴルダ、同じような直裁な「表現」です。
いきなり”性器を見せたから”ってその気になるのか?という疑問が生じます。
これは男女逆の設定、男⇒女の表現でもありましてナワール・フリアンが女性を誘惑する不思議なシーンもありますのでいずれ紹介させてください。(pending)
例のBBCのカスタネダに関するドキュメンタリー「Tales From The Jungle」に出演しているありし日のAmy Wallaceは、「カルロスは”私のヴァジャイナがブルー・スカウトと同じヴァジャイナだ”って言ってたわ」と発言しています。
ちなみにブルー・スカウトというのはカルロス流の呪術師たちにつけるニックネームのひとつで、パトリシア・パーキン(Patricia Partin(別名 Nury Alexander))という19歳、元ウェイトレスの女性だそうです。独自の”洗礼名”をつけるのもカルトに共通のふるまいのようです。
彼女が南カリフォルニアのどこかから云々とAmyが話しているのですが、その部分だけ英語がわかりませんでした。
動画にポルトガル語のスーパーがついているのでGoogle翻訳を使ってみましたが、その聞き取れなかった句動詞?のパートは翻訳されていませんでしたので「連れてきた」というだけかもしれません。
パトリシア・パーキンについては、こちらに詳しくあります。
この家で暮らす16人のメンバーは二つのグループに分かれていて各々8人。クララの方はグラウ家。ネリダの方はエイブラー家。タイシャはエイブラー家の一員だと言われ、廊下で『意図』という言葉を叫ぶように言われ気を失います。(飛翔303)
(初出:2016年10月13日)
- シリーズ後半で登場する概念です ↩︎