1972年の早春、Dick Covett Showのプロデューサーが彼に出演交渉をしてきた。
これはなかなかのオファーだったが、彼は断った。カルロスは、テレビで道化のように扱われるのが嫌だった。たったの15分で彼のドン・ファンとの体験を話したら茶の間でどうとられるだろうか。
カルロスがDick Covett Showに出たくない理由は他にもあった。”連絡不能”にすることにはある種の力と自由があるからだ。
Ned Brownは彼の二冊目でもインタビューを受けるようにしたので今回の『イクストランへの旅』でも同じようにさせていたが、新聞か雑誌だけでテレビ出演は行っていなかった。
呪術師の詳しい話、ドンファンとの最後のエピソードは四冊目の本(『力の話』のこと)で書く予定だし、まだ一年以上先の話だ。
今、若くて生意気なエリート主義者のDick Covettに会って『分離したリアリティ』について根掘り葉掘り突っ込まれるのは得策ではない。
彼のセミナーの終盤では本に書かれた内容から次第に離れ、これまで誰も聞いたことのない呪術の領域に入っていった。
例えば”四つの風(the Four Winds)”の話。
それは呪術師が探し求めなければいけない四人の女性で、盟友との最後の戦いで必要となる者だと言った。
また呪術師の弟子がいよいよ本物のブルホ(呪術師)になる儀式に立ち会うことになっているそうだ。
北は、”盾”となり彼を守る。後ろ側の南には、暖かい風の”ジョーカー”。”ジョーカー”は、春の明るさと軽妙さを持っている。彼女は厳しい北風を和らげる。西は、内省が”スピリット・キャッチャー”で現わされる。
最後が”武器”で東だ。武器は、最も権威がある存在で、またの名を”光明の風”と言う。
カスタネダは、彼女たちがソノラ(砂漠)の草原で盟友からの攻撃を弱めてくれるのだと学生たちに話した。彼女たちはぞっとするようなバレエのような踊りをする。
盟友は、彼女たちを次々に攻撃し最後に呪術師の弟子と向き合う。そこで彼が盟友を地面に組み敷くことができれば盟友の力を得ることができる。
もし弟子が負けたら振り回されて文字通り空中にものすごい速度で放り投げられてしまう。
ドン・ヘナロ(Don Genaro)は、それで彼の人間としての一部を失ってしまった。彼は二度と家に戻れなくなった。彼の旅、故郷のイクストランに帰る旅は永遠に続くのだ。
学生たちの多くは、カルロスの風や盟友の話がシャーマンが一人前になるための儀式について隠喩的な話だと受け取っていたが、それにしても怪しげな話だと思った。
「ぼくはまだ四つの風を持っていなので、自分で追い求めなければならない。自分がその段階だと感じたら実行するつもりだ」とカルロスが言った。
これは、エイミーの本を読んだ後だけに、カルロスが女性をものにするネタだと思っています。
(初出:2018年8月3日)