第28章はマーガレットの独白的な締めなので割愛します。
■エピローグ
ついに私はカルロスとはもう二度と会うことも話すこともないということを受け入れた。彼は、もう私の電話にも出ないし、彼の仕事場で頼んだ伝言にも返事を寄こさなかった。
David Christieが1993年の10月1日、カリフォルニアのサンタモニカのPhoenix Bookstoreで講演会をやるという連絡を受けて驚いた。
◎ガイア書店
◎書店でのエピソード:『C.J.カスタネダの話(3)『ドン・カルロスの教え』(27)』
彼の最新の著書、『The Art of Dreaming』(『夢見の技法 - 超意識への飛翔』)が出版されてひと月か二月経ったばかりだった。私は興奮を抑えられなかった。
ところでDavid Christieって誰でしょう?当たり前のように登場した人物ですが、これまで言及がありません。
「絶対に行きたい。どうすればいい?」と私が尋ねると
「招待客だけなんだ」とDavidが言った。
Davidは、書店のオーナーにゲストを連れていっていいかどうか聞いてみると言ってくれ、彼に付き添って出席できることになった。
すぐに私はAdrian(C.J.のこと)に連絡をとった。
彼も興奮し私と行きたいと言った。私が難しいかもしれないと言うと、彼は「大丈夫。僕は入るよ」と言った。
早めに着いて冷静になればカルロスと話すチャンスがあるかもしれないと思った。
でも、チャンスは訪れなかった。
私達はカルロスが現れる前に書店に入ることになった。
受付ではAdrian(C.J.)一人で入場を待っている人に自分をゲストとして一緒に入ってもらえないか頼み込んだ。彼女はイエスと言ってくれた。
カルロスが遂に登場した。首のところが開いたシルクのシャツに茶色の革のベスト、そしてカウボーイブーツだった。
彼の髪が完全に白髪になっているのをみてショックを受けた。私は彼がネクタイとスーツを着て現れると思っていたのに。
長い年月は私たちのつながりを完全に絶ってしまった。
彼は痩せていて体形も良かった。私は目を閉じて彼の朗らかなトークに耳を傾けた。そして目を開いてステージ上の彼を見つめた。彼は今も魅力的で聴衆を虜にしていた。彼は三時間しゃべり続け質問も受け付けた。
彼はステージを降りると書店の裏口から姿を消した。
一瞬でもいいから彼と話したいと思い急いで会場を出た。
彼はヴァンに既に乗り込んでいたが、Adrian(C.J.)がヴァンの窓を叩いた。
カルロスは車を止め「おぉ!私のChocho!」と言って降りてきた。
彼はC.J.を見て抱きしめて話し始めた。
C.J.は自分がカルロスに言われたように強い戦士だった、カルロスと一緒に戻れると何度も繰り返した。
C.J.が話しているあいだに私は近づいてカルロスのガードらしい背の高い女性に言った。(フロリンダかもしれませんね)
「カルロスがC.J.と話し終わったら私も話をしたいんです」
彼女が答えた。
「だめです」
私が言った。「私が誰だか知ってるの?」
彼女が答えた。「ええ」
私はそこに立ち待ち続けた。
カルロスが私のところに来た。彼は私に腕を回し頬にキスをした。彼は嬉しそうだった。
彼は一歩下がって私を見つめた。私は彼に『夢見の技法』にサインをしてほしいと言った。
彼の答えは想定外だった。「ごめん。手が疲れているんだ」
そして彼は彼の手を見せて本当に疲れているんだという身振りをした。
私はカルロスに言った。「大丈夫。革の想定の本をEaston Pressから注文したから。それはサイン本だし」
彼はヴァンに乗り込むと私に投げキスをした。
車が去った。
彼はこれまでもずっとそうだったように謎めいた雰囲気のまま私から去っていった。
最後に、ウマル・ハイヤーム1によるルバイヤートから詩が引用されていますので原文(英語)のまま引用します。
Yon rising Moon that looks for us again――
How oft hereafter will she wax and wane;
How oft hereafter rising look for us
Through this same Garden――and for one(斜体) in vain
The Rubaiyat of Omar Khayyam
あの月が私たちをまたさがしている――
これからどれくらい満ち欠けるのだろう;
これからどれくらい私たちをさがしにあらわれるのだろう
このいつもの庭を――それはかなわないことなのに
―オマル・ハイヤームのルバイヤートより
- ウマル・アル=ハイヤームは、セルジューク朝期ペルシアの学者・詩人。 ↩︎
(初出:2018年8月16日)